想像力の肥溜め

文章というか、文字列の集合体

コミュニケーションの場

先日、所用のため東京の銭湯に立ち寄ることになった。スーパー銭湯ではなく、昔ながらのサウナがないお風呂だけの銭湯で、実際に昭和40年くらいから営業してるそう。
番台には70代らしきおじさんがいて、僕が男湯の暖簾をくぐりドアを開けた時には、別の70代らしきおじさんがひたすらに「お風呂から酸素が出てないんだよ」ということを番台のおじいさんに言っていた。そうか、酸素が出てないのか、と思いつつその会話が終わるまで番台越しに見えそうな女子風呂にそわそわしつつその場で待つことにした。1分程して酸素出ないおじさんが去り、僕が番台にいくらか聞くと460円だというので1000円札を出した。すると、番台の台に乗っかってるコインのタワーからすぐお釣りを返してくれた。1000円用のお釣りを常に用意してるようだった。

まず桶とイスを取り、髪の毛と身体を洗う。シャワーヘッドなんてものは存在せず、蛇口から出てくる熱いお湯でさっぱりしたところで、富士山の麓にあるお風呂の方に向かう。お風呂は三つにスペースが区切られていた。右が高温湯、真ん中は何も書いてないので普通だろう、左は低温湯になっていた。
まずは真ん中に入ってみる。うん、熱い。無理。すぐさま左の低温湯に移動した。まずは手をつけてみる。うん、大丈夫だ。いざ入ってみると、身体は多少のヒリヒリを伴いながら深く沈んでいった。20秒たったころに思った。あ、これ無理なやつだ。温度計を見るとなんと42℃を指していた。おい、低温を小学校で学び直せと、失礼なことを思いながら5分ほど耐えた。もちろん水を入れる蛇口はあるが、やはりあまり使いたいものではない。常連のおじいさんに怒られるなんてお決まりはくらいたくない。
耐えかねた僕は一旦出て、洗面台にイスを持ってきて座った。身体を冷やしてから湯船に戻ると、おじさんが先客として入っていた。おじさんは声をかけてきた。
「お兄さん、何歳?」
「19で、もうすぐ20です。」
「若いねえ」
「ありがとうございます」
こんなふうな会話を続けた。銭湯はコミュニケーションの場になる。